ソニー・ホンダのEV事業はなぜ停滞するのか?物理学から見る「エネルギー密度の壁」

1489回_高橋洋一高橋洋一チャンネル要約

ソニーとホンダの共同による電気自動車(EV)事業が事実上、足踏み状態にあります。メディアでは「挑戦を止めるな」といった精神論が語られますが、この問題の根底には物理学的な制約が存在します 。

ガソリンとバッテリーの圧倒的な「エネルギー密度」の差

EVが普及しきれない最大の理由は、バッテリーのエネルギー密度が低すぎることにあります 。

  • 重量の問題: バッテリーのエネルギー密度をとすると、ガソリンは「50」に相当します。
  • 積載効率: ガソリン1リットルと同じ距離を走るためには、その50倍の重さのバッテリーを積む必要があります。ガソリン2リットル(約2kg)で済む出力を得るのに、100kgのバッテリーが必要になる計算です。

この重量の差が、高出力を必要とする移動体において大きな障害となっています 。

なぜ「電気飛行機」は存在しないのか?

この物理的制約は、他の移動体を見るとより顕著になります。スマートフォンは消費電力が小さいためバッテリーで稼働しますが、離陸に巨大なパワーを必要とする飛行機をバッテリーで動かそうとすると、重すぎて飛び立つことすらできません 。

「蓄電」よりも「燃焼」の方がエネルギー効率において圧倒的に有利であるというのが物理の現実です 。

原子力エネルギーの圧倒的なポテンシャル

エネルギー密度の観点では、原子力はさらに桁違いの性能を持っています。蓄電デバイスを「1」とした場合、核分裂によるエネルギー密度は8000万に達します 。極小の量で膨大なエネルギーを得られる原子力が、物理学的には最も効率的なエネルギー源といえます [2]。

小型モジュール炉(SMR)の安全性と「3/Rの法則」

最新技術である小型モジュール炉(SMR)は、物理学的な特性によって安全性が高まっています 。

「小さく作れば自然に冷える」科学的根拠

原子炉の暴走を防ぐには、熱を効率よく逃がす必要があります。体積に対する表面積の比率は「3÷半径(R)」という公式で表されます 。

半径(R)が小さくなればなるほど、表面積の割合が大きくなり、自然に熱を放出しやすくなるのです 。体育館の半分程度のサイズであるSMRであれば、自然放熱による安全な運用が期待できます 。

地産地消のエネルギーモデルへ

SMRを各地域に設置できれば、大規模発電所からの遠距離送電による熱エネルギーロスを解消できます 。また、1つの小型原子炉で約5万世帯の電力を賄うことが可能であり、エネルギーの「地産地消」が実現します 。

核のゴミ(廃棄物)についても、技術進歩によって半減期を短縮する研究が進んでおり、将来的に克服可能な課題と考えられています 。


参考ソース: 髙橋洋一チャンネル「1489回 ソニー・ホンダEV断念に日経がアホ社説」